広島や長崎、沖縄への修学旅行で行われる平和学習の多くは、過去の出来事を学ぶことが中心です。70年以上前の出来事を自分ごととして捉えるためには、相当なリテラシーや想像力が求められます。戦争体験者も少なくなるなかで、新たなアプローチの平和学習が必要とされている。そのような課題感がきっかけとなり、プロジェクトは始まりました。
プロジェクトメンバーは、企業の新商品開発などのアイデア発想を支援するプログラムを提供してきました。そこで求められる課題解決の技術やプロセスを、平和学習にも役立てられるのではないか。そのような考えのもと、これまで企業向けに提供してきたワークショップの知見を応用し、独自の平和学習プログラムを開発しています。2020年から、長崎や広島、沖縄への修学旅行生を主な対象としてサービスを提供開始。2021年には、総合学習の授業や、企業の人事向けの研修としても提供をはじめました。
4つのプログラムを提供・開発中です。
目の前には、1個のホールケーキ。このケーキを5人で、いかに平和的に切り分けるかを考えます。最終的な切り方を決めるまでに、「キャラクターカード」「ハプニングカード」「ルールカード」といったカードが参加者に渡され、ケーキを切るための新たな条件が次々と加えられていきます。利害関係の一致や意見の衝突が生じるなかで、グループでディスカッションしケーキの切り方を考え、発表します。国の利害が衝突し争いになったり、ルールやハプニングによって立場が変わる。歴史や社会課題をケーキに見立てて体験してもらうプログラムです。「均等に分けることが、必ずしも平等じゃないことがわかった」「平等に分けることが目的だったのに、いつのまにか争っていた」など、さまざまな感想が寄せられています。
滅亡寸前の未来の地球を救うために、あなたは未来からやってきた。そんな設定のカードゲームです。地球が滅亡した原因を「ウイルス」「核兵器」などから選び、それを解決する方法をアイデア発想のためのカードを活用して考えます。カードには「夜の___」「大人の___」「閉店後の___」など、その言葉がつくだけで企画になってしまう魔法の言葉が書いてあります。ゲームのように楽しみながら、1時間で数十個のアイデアを生み出す体験ができます。「夜の核兵器」「大人の核兵器」「閉店後の核兵器」など言葉の組み合わせからうまれたアイデアの種を、チームでディスカッションしながら発展させます。身近な問題から、社会課題まで、様々な課題を解決するのはアイデアだということと、そのアイデアを生み出す具体的な方法を身につけてもらいます。
限られた資源で、工場や銀行、食料などをつくります。選択肢のなかには兵器をつくるというものも。隣国との交渉も発生し、最終的に誰が勝つのか。世界はどうなってしまうのか。簡単なゲームで国家間のパワーバランスや「抑止論」、その緊張感を体験することができます。その後ゲーム制作の際にポイントとなった点を解説。ゲームの状況と世界の状況とをリンクさせることで、新たな気づきや視点を得ることができます。
あなたは新人キャスター。着任早々、先輩の無茶振りで1時間でニュースをつくる羽目に。身の回りの人の声に耳を傾けながら意外な一面を聞き出して、短く簡潔に伝えてみよう。人の話を聞いて、自分なりに短くまとめて伝える。コミュニケーションの基本的なプロセスをゲーム感覚で体験することができます。簡単なようで難しい、相手の話を聞くということ。ましてや戦争体験を伝えるのはもっと難しい。戦争体験の継承の難しさを感じてもらいます。加えて身近な争いから、仕事でのトラブル、国と国との争いまで、その根底には「コミュニケーション不足」があるということも体験を通して感じてもらいます。
Project Member: Hitoshi Nakao, Issei Asato, Kiyoe Yokokura, Mitsuhiro Hayashida, Nadya Kirillova, Naoto Nakamura, Remi Enomoto, Rio Ebato, Shotaro Shimomoto, Shuto Takeishi, Sotaro Takahashi, Tomoyuki Torisu
Peace Games 平和をつくるために必要なコミュニケーション力や課題解決力を、楽しみながら身につける。ゲームがきっかけで、歴史や社会についてもっと深く学びたくなる。 https://peacega.me