時代の変化が激しく正攻法では解決できない課題が増えるなかで、企業や自治体が新しいことを生み出すために、本体から離れた組織をつくり事業を推進する「出島組織」や「出島戦略」が注目を集めています。本イベントは日本中の出島組織が集結し、それぞれが抱える課題や知見を共有しながら、知恵の交易を行うサミットです。
初開催となった今回は、シンガポール、東京、神奈川、大阪、山口、福岡、大分、佐賀、そして地元長崎の30社・52名が参加。鉄道会社や航運会社、製菓会社など大企業から、スタートアップ支援企業、大学、自治体、伝統工芸など他業種の出島組織が知見を共有しました。
会場となる長崎の出島は、1634年江戸幕府の対外政策の一環として長崎に築造された人工島。鎖国時代に唯一西欧に開けていた港で、現在は当時の街並みや館の様子が再現されています。当時は世界中の東インド会社の寄港地(出島的な地域)とつながっていたために、長崎の出島には世界中の最先端の文化が集まっていました。その長崎の出島にある「旧内外クラブ」にて、初の出島組織サミットin出島が開会されました。
午前のプログラムでは実行委員会会長の鳥巣智行(Better)から挨拶をしたあとに、実行委員会副委員長の倉成英俊(Creative Project Base)が「出島組織とは何か?」と題し、独自調査より類型化した7つの出島組織のパターンを発表。
その後参加社全社が自己紹介し、それぞれの取り組みを1分で共有しました。1分という短い時間にもかかわらず、それぞれの取り組みは興味深く参加者同士のつながりづくりのきっかけとなる時間に。
午前のセッションが終了し、ランチは出島表門橋公園で出島を眺めながら、様々なメニューがミックスされた長崎名物「トルコライス」を。その後実施された出島組織のための特別出島ツアーでは、事前にピックアップされたスポットを学芸員の山口美由紀氏がガイドします。「なぜ幕府は江戸ではなく遠く離れた長崎に出島を作ったのか」「辺境から新たな文化がうまれる理由」「「つなぐ」だけではない、橋がもたらす意外な機能」など、出島組織の組織運営のヒントになる解説を受けながら出島を見学したあとに、振り返りの時間ではフリーディスカッションの時間が設けられました。参加者からは「出島の中で生活していた人たちは幸せだったのでしょうか」といった質問が途切れず、参加者それぞれの視点で見つけた出島組織のヒントをシェアする場となりました。
「知らなかった!こんな出島組織がある」と題した後半のセッションでは、藤本あゆみ氏(Plug and Play Japan)、米田利己氏(コミュニティメディア)、辻諭氏(224porcelain)、新井達夫氏(b.note)が登壇。ファシリテーターを藤吉雅春氏(Forbes Japan)、鳥巣智行がつとめ、大企業型ではない珍しいタイプの出島組織の成り立ちや、そこから生み出されている価値などについて伺いました。
最後のセッションでは「本土との橋のかけかたについて」をテーマに、柴田裕氏(JR東日本スタートアップ)、樋口謹行氏(Calbee Future Labo)、キリーロバ・ナージャ氏(電通Bチーム)、岩井泰樹氏(Ocean Network Express)が登壇し、藤吉雅春氏と倉成英俊がファシリテーションしながら、話を伺いました。いまだかつて注目されたことがなかった「出島組織」と「本体組織」の橋のかけかたのポイントについて、実践例を交えながら語る様子は多くの参加者が参考になったようです。
すべてのセッションを終え、最後に長崎出島組織認定が行われました。「長崎出島組織認定」とは、事前に申請した組織に対して、所定の条件を満たしているか実行委員会が確認し、長崎市が公式に認定するというもの。記念すべき第一回の認定式では14社が認定を受けました。認定証と出島への年間パスポートが長崎市長から授与されたのちに、長崎市長からご挨拶をいただきました。
参加者からは早くも来年の開催に期待が集まっています。出島組織サミットでは、年に一度の出島組織サミットを開催するほか、「出島組織サミットオンライン」の開催や、出島組織に関する書籍の発行、オンラインコミュニティの運営を予定しています。次回の開催日時等は未定ですが、活動に関しては公式サイトにて情報発信していく予定ですので、興味があるかたはご確認いただければ幸いです。
出島組織サミット実行委員会:鳥巣智行(Better)/ 倉成英俊(Creative Project Base) / 中村直史(五島列島なかむらただし社)/ 溝口貴史 / 宮嶋貴子(苺堂)/ 原田宏子
ロゴデザイン: DEJIMAGRAPH
写真:上野平将人